金融商品取引法とは
金融商品の多様化により消費者が混乱し、それに乗じて詐欺的取引をする業者とのトラブルが多発しました。
また、金融商品の規制をする業法が多数存在し、消費者にとってわかりにくい状態が長く続きました。
そこで、従来の業法を見直して4法律を廃止し、89法律の一部を改正しました。その代表的な法律が金融商品取引法です。
金融商品取引法では、従来の証券取引法の規制対象である「有価証券」の範囲を拡大し、集団投資スキーム(ファンド)の持分を有価証券とみなして規制対象にしました。
また、幅広い資産・指標に関する複雑な取引である、いわゆるデリバティブ取引についても、規制対象範囲を拡大しました。
仕組み預金や外貨預金、変額年金保険、商品先物取引(国内)など投資性のある金融商品には、金融商品取引法の制定に伴うそれぞれの業法の改正によって、金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用されます。
更に金融商品取引業を行う業者はすべて内閣総理大臣に申請、登録が必要になりました。
そこで、金融商品取引業は取り扱う内容に応じて4つに分類されました。
金融商品取引業 主な業務内容
(1)第一種金融商品取引業
・流動性の高い有価証券の販売・勧誘
・顧客資産の管理
・店頭デリバティブ取引の販売・勧誘
(2)第二種金融商品取引業
・流動性の低い有価証券の販売・勧誘
・市場デリバティブ取引の販売・勧誘
(3)投資運用業
・投資運用
(4)投資助言・代理業
・投資助言
・投資顧問契約・投資一任契約の締結の代理・媒介
金融商品の複雑化と損失リスク
金融機関が提供する金融商品やサービスの数が増えていき、その仕組みも複雑化しています。
例えば、先物取引やオプション取引といったデリバティブ(金融派生商品)と呼ばれる取引の手法を使った複雑な仕組みの金融商品も増えています。デリバティブは、リスクを抑え一定の収益を確保しようとしたり、大きなリスクを覚悟して高い収益性を追求しようとした取引手法です。デリバティブを組込んだ金融商品には、為替相場や株価などが予想どおりに変動すると大きな収益が得られる反面、予想に反して変動すると大きな損失が発生するという特徴があります。
消費者が金融商品を選ぶとき、その商品が何を運用対象にしているのかよくわからないのでは、自分が購入しようとしている商品のリスクを正しく理解できていないのと同じことです。その場合は自己判断ができない状態で運用を他人任せにすることになり、損失を被ったときに自己責任という言葉に泣かされてしまいます。
また、一般に仕組みが複雑なほど、さまざまなコストがかさむものです。賢い金融商品選びは、あくまでリスクに対する正しい理解のうえに成立つものですから、新しい金融商品を購入するときには、取扱っている窓口などで、商品の内容・仕組み・コストについて自分が納得できるまで聞くことが必要です。
単に銀行預金の利率が低いからという理由だけで、リスクが高い取引を始めるのは無謀といえます。運用方法の理解が出来ない取引には手を出すべきではないでしょう。
ペイオフ解禁と預金者保護
一般的に現金資産は銀行に預金することが多くなっています。この預金は保護されるという信頼感があって今日の経済社会は成立しています。
そのような中で、平成14年にはペイオフの解禁が行われました。
ペイオフ(payoff、支払うの意)とは、預金保険金の支払いのことをいいます。
「ペイオフの解禁」という言葉が使われるときには、平成14年3月末までの全額保護が終了し、「1,000万円を超える預金はカットされるかもしれない」ということを、“ペイオフ”と捉(とら)えられていて、平成14年4月には、ペイオフが“部分的に解禁”されたと解説されることもあります。
平成26年現在では、保護対象預金等(一般預金等といいます。)は1金融機関1人当たり、合算して元本1,000万円までとその利息等(定期積金の給付補てん金、金銭信託における収益の分配等を含みます。)が保護されます。
預金をした銀行が破綻した場合は、元本1,000万円を超える部分とその利息は、破綻した金融機関の財産の状況等に応じて支払われることになります(一部カットされる場合があります)。
つまり、1,000万円を超えた部分については保護されなくなったということです。
銀行などの金融機関も破産することがあるので、預金者としてはリスク分散のために預金先を複数に分けるなどの対処が必要といえるでしょう。
亡くなった親が知人にお金を貸していたことが発覚。返済の請求をするには。
親が知人にお金を貸して、その返済がされないうちに親が亡くなった場合には相続の問題となります。
親が貸したお金の返還請求をする権利(債権)については、子や配偶者が相続することができます。
ただし、兄弟姉妹など複数の相続権者がいる場合には、遺言書や遺産分割協議書などをそろえて、貸したお金についての債権を誰が相続したのかがわかるようにしておかなくてはなりません。
親と債務者の間で交わした借用書が存在すれば、その借用書と相続書類を証拠資料として提示して、返済についての話し合いを行い、合意した内容について改めて債務承認弁済契約書を作成しなくてはなりません。
相続人の子と債務者の間で債務承認弁済契約書を締結できれば、穏便に債権回収を行うことが可能となります。
借用書が存在せず、債務者も返済する意思を示さない場合は、金銭貸借の事実関係を証明する資料を探して、裁判も視野に入れる必要があります。
相続やお金の貸し借りの問題は、時間が空くほどに解決が難しくなってしまうものです。
亡くなった親に債権があることが判明したら、すぐに相続人を確定させた上で、債務者に対して債務承認弁済契約書の作成に応じるように交渉をした方がよいでしょう。
親から会社の運転資金を借りたことについて贈与税を課せられないために
会社の運転資金や新規で起業する場合の資金を親から借りることはよく行われています。
事業経営をサポートしてくれる家族がいるのは頼もしいものです。
ただ、その資金の融資が贈与なのか、それとも返済義務のある金銭貸借なのかが問題になってきます。
この資金提供が贈与とみなされる場合には、贈与税の対象になってしまいます。
年間110万円を超える贈与については、贈与税が徴収されます。
親からの資金提供が金銭貸借である場合には、贈与税の対象にはなりません。
但し、金銭貸借には返済義務があり、長期間の分割返済には銀行金利と同程度の利息を付けて返済をしていかねばなりません。
金銭貸借の場合には、その事実証明のために金銭消費貸借契約書を作成しておく必要があります。
分割返済の場合には、銀行ローンでも一般的な元利均等方式で利息計算をして、その年利は1~3%程度とするのが無難です。
また、実際に返済をしていることも証明しなくてはいけません。
法的にも通用する体裁の整った金銭消費貸借契約書を用意して、銀行口座で返済履歴も確認できるようにすれば、これは金銭貸借となるので贈与税を請求されることはありません。
せっかく契約書を用意しても、そこに書いた文言が金銭貸借の要件を満たない場合は事実証明の文書として不適格になってしまいます。
贈与税と金銭貸借の契約書の詳細な情報については、親からの起業や運転資金の融資について贈与税を課せられないためにというページをご参照下さい。
支払い督促や訴訟などの裁判手続と債務承認弁済契約書
過去に貸したお金を返済してもらうには、金銭貸借の事実承認と返済プランを定める債務承認弁済契約書を作成するのが最も一般的な方法です。
こうした契約書を作成しておけば、返済を滞らせた相手方(債務者)が改めて契約書で定めた期日までに返済をしないときには、その契約書を証拠資料として裁判による回収を図ることができます。
そうした話し合いや契約書作成をしても返済がされない場合には裁判所を通じた手続を検討することになります。
債務者がお金を借りた事実を認めていて、その金額についても争いが無い場合には、簡易裁判所で手続をする支払い督促制度が利用できます。
債権者がこの支払い督促の申立てを行い、債務者が異議を申立てしなければ差押が可能になります。
(債務者が異議申し立てをすれば、通常訴訟に移行となります。)
債務者との間で返済する金額について合意ができていない場合には、通常訴訟で争うことになります。
債権額(訴額)が140万円以下であれば簡易裁判所が管轄となり、140万円を超える場合は地方裁判所で手続きを行います。
(債権額が60万円以下であり、証拠が全て揃っている場合には、簡易裁判所で1日で判決の得られる少額訴訟制度もあります。)
ただ、支払い督促や訴訟などの裁判所の手続では、証拠が用意されていることが前提になります。
口約束だけでは証拠能力が不安定なので、金銭貸借の要件を満たした上で、返済期限が到来したことを証明する契約書が必要になります。
また、仮に裁判に勝ったとしても、差押の手続きは債権者自身が行わなくてはいけないので、債務者の財産(銀行口座情報や不動産の地番)については事前に把握をしておく必要があります。
債務者に全く資産が無い状態で裁判を行うと、その裁判に勝ったとしても結局は回収不能になることもあるのです。
このように裁判所の強制的手続きをするにも、契約書を用意しておくことと、銀行口座情報を把握しておく必要があります。
裁判には数ヶ月の時間を要することも多く、その間に債務者が逃亡してしまうリスクもあり、即応性には欠けてしまいます。
裁判にも通用する契約書を用意して、万が一の場合には裁判をすることを相手に意識させつつ、誠実に返済をしてもらうことを動機付けるのがベストな選択と言えるでしょう。
金銭貸借の契約書作成については、債権回収の裁判手続をするには借用書などの証拠が必要のページをご参照下さい。
貸したお金を自分で回収する方法
貸付をしたお金がなかなか返済されない場合には、債権回収の行動を起こさないといけません。
しかし、互いに知り合いなら、できるだけ手間も費用もかけずに平和的に解決をしたいものです。
そんな場合には、まずは当事者同士で話し合いをして、現実的な返済計画を立てる必要があります。
お金を貸した側としては、すぐに一括返済をしてもらいたいところですが、債務者に資金がなければ無理な話です。
そこで、分割返済を認めて、毎月いくらなら返済が可能なのかを確認します。
そして返済月額が確定したら、債務承認弁済契約書を作成して、返済を確約して貰います。
債権額が大きい場合は、公正証書の作成を分割返済を認める条件にするべきでしょう。
相手方が返済する意思がある状態なら、自分で契約書の締結手続までを誘導することで債権回収を図ることが可能です。
契約書作成については、貸したお金を自分で回収するために 債権回収のツールとしての借用書をご参照下さい。
金銭の預託契約と贈与契約、消費貸借契約の契約書
金銭を第三者に渡す場合に、それが預託なのか贈与なのか消費貸借なのかを明確にしておく必要があります。
預託の場合は、預かった金銭を一定期間保全して返還する義務があり、特約がなければ受預者は金銭を使用することは許されません。
贈与の場合は、金銭を譲渡するわけなので、受領した金銭はどう使おうと自由です。(但し、特約で使用用途が限定される場合は、その契約内容に拘束されます。)
受贈者は金銭を返還する義務もありません。
金銭の消費貸借の場合は、貸与された金銭は特約が無ければ自由に使用することができますが、契約で定める期間が経過すれば全額を返還する義務が生じます。
このように金銭を交付する場合には、様々な契約の形があります。
口約束で金銭を交付した場合に、片方が金銭貸借だと認識していて、相手方が贈与だと認識していると、後日に紛争が生じます。
また、口約束では契約の証拠が残らないため、一方が意図的に解釈を捻じ曲げるリスクもあります。
そんな金銭トラブルを起こさないためにも、ある程度の高額な金銭のやり取りをする場合には、必ず契約書を作成しておきたいものです。
この契約書作成については、他人にお金を預けて管理してもらう預託契約の契約書のサイトをご参照下さい。
男女交際の解消と金銭貸借の清算のためには債務承認弁済契約書の作成
男女交際や婚約や事実婚を解消する場合には、いろいろな問題を清算しなくてはならないものです。
交際期間が長ければ、その間にお金の貸し借りや家賃や生活費の立て替えをしていることも多いものです。
交際期間中にどのくらいの金銭貸借をしたのかを二人で確認し、その合計金額をどのように返済していくのかを決める必要があります。
交際を解消し別れてしまった後では、そのような事情で貸したお金を返してもらうのが難しくなってしまうので、別れることが決まれば、すぐにお金の清算について話し合いをしなくてはなりません。
すぐに一括返済ができる金額であれば問題は起きませんが、分割でなければ返済が出来ないような状態であれば、債務承認の契約書を作成し、確実に支払いがされるように手を尽くすべきでしょう。
また、婚約をしている場合や事実婚の場合には、浮気などで交際を一方的に破棄されたという事情があれば、それは民法上の不法行為として慰謝料を請求できる余地もあります。
特に慰謝料を請求しない場合でも、お金の貸し借りがあって、その清算をするには債務承認弁済契約書を作成するのが適切です。
遠方の相手方と金銭貸借の公正証書を作るには
金銭貸借の契約を確実に行うには、公正証書を作成するのが最善の手段です。
公正証書とは、全国主要都市にある公証役場にて作成する契約書であり、特に金銭給付の契約については強制力が伴う厳格な手続になります。
通常の当事者間だけで交わす契約書(私製契約書)の場合は、契約違反があったときには、違反者に対して即時に強制的手続をすることは難しく、通常は契約書を証拠として裁判を経てから強制執行をする流れになります。
裁判を終えるまでに時間を要するので、債権を回収するのも相当な時間がかかることになります。
強制執行認諾文言を付加した公正証書を作成した場合には、契約違反があったときにも裁判を経る必要はなく、即時に強制執行が可能になります。
その即応性と強制力をもって、債務者に契約を履行させる動機づけをするので、公正証書を作成すると通常よりは高い確率で支払いが行われるというメリットがあります。
公正証書の作成には、契約をする全当事者が一緒になって公証役場を訪問することが前提となります。
契約の相手方が遠方に住んでいたり、予定が合わない場合は、なかなか手続が進みません。
そのようなケースでは、公正証書作成の手続を代理人に委任するという方法もあります。
当行政書士事務所では、公正証書の作成を代理して手続することも承っております。
詳細は下記ページをご参照下さい。